高麗島陥没と洪水伝説
どんな伝承か
『天地始之事』では、聖書に見えるノアの洪水の話が、郷土の伝説である高麗島の陥没の物語と結びついて語られる。高麗島は五島列島の北西の沖、五、六十キロほどの所にあった島で、沈んだ今は高麗曾根と呼ばれている。信心深い翁はハッパ丸次という名で呼ばれ、子どもたちを船に乗せて水難を逃れ、たどり着いた先が久賀島の「蕨」という今もある小さな集落だとされる。柳田国男も『島の人生』の冒頭でこの話を取り上げている。
原典より
この翁が子供を船にのせ、水難をまぬかれてこぎ着いたのが、久賀島の「蕨」という現存の小部落である。—— 日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。