黙って本堂の鐘を打つ寺送り
どんな伝承か
南牧村でも手前にあたる旧月形村の諸部落では、穴廻りの話は聞かれないが、寺送りと呼ぶ習わしが二十年ほど前までは広く行われ、今もまれに見られるという。六車部落にある大雄寺の住職によれば、三角袋に入れた米一升と、渋紙などで包んだ死者の衣類とを、親戚の者二人が葬式のすぐあとに寺へ運び、黙って直接本堂に上がって鐘を打つ。翌日に施主の家で行う忌明けの相談も兼ねてくるので、住職はその鐘の音を聞いて応対に出るのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊魂の行方(最上孝敬・最上孝敬・葬送民俗・1984年(昭和59年))
『霊魂の行方』は、最上孝敬の葬送習俗に関する論説を集め、名著出版が昭和五十九年に刊行した論集である。死者の霊を家から送り出す霊送りやカラダビ、骨掛け、男女別墓制と半檀家、無縁仏、盆と施餓鬼、葬儀の水など、千葉・埼玉をはじめ各地で聞き取った習俗と既刊の報告をもとに論じる。「霊送りとその周辺」「葬送の諸問題」「葬祭の民俗」の三章に二十八篇を収め、巻末に初出一覧、大島建彦の解説、年譜、著作目録を付す。