胡麻で眼を突いた白根の山の神と作物の禁忌
どんな伝承か
神が片目を怪我して一つ目になったという伝承は意外に多い。群馬県吾妻郡の六合村では胡麻と里芋を作らないが、それは白根の山の神が里芋の殻で滑り、胡麻で眼を突いて片目になったからだという。ほかにも栗のいがや松で神が眼を傷つけたとして、その木を植えない、門松を立てないといった禁忌が各地に数多くある。神が転んで眼を怪我したという不体裁な話がなぜ受け入れられたかについて、柳田国男は、祭りで神の依り代となる者を常人と区別するため片目片足にした風習があり、眼をつぶすのに使った栗のいがや松葉が忌まれるようになったと推した。著者は一つ目小僧を零落した神の姿と見ている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・1956年(昭和31年))
『河童・天狗・妖怪――民俗随筆』は、武田静澄が昭和三十一年に著した民俗随筆である。天狗と神かくし、河童、座敷わらし、山の神と山の妖怪、狐狸とつきもの、水辺や海の亡霊、死霊と御霊などをめぐる伝承を、『今昔物語』などの古典の説話と各地の民俗の事例から集めて語る。短い見出しを立てた小文を連ねる形をとり、神かくしにあう心理や幻覚、お化けの心理にも触れて、妖怪を信じる心のはたらきを考える。