釜が渕の白い鯉と赤い鯉
どんな伝承か
戦の絶えない昔、勝山城の殿様には、色白の雪姫と頬の赤い紅葉姫という二人の姫がいた。城が攻め落とされて殿様も家来も果てると、雪姫は敵に捕まるよりはと妹とともに城を抜け出し、鬼怒川の渦巻く釜が渕へ抱き合って身を投げた。のちに船乗りたちは、そこで仲よく泳ぐ白と赤の鯉を見て姉妹の化身だと噂した。さらに後、漁師の源じいさんが淵で大きな白い鯉を網にかけると、帰ろうとするたび「雪姫」と呼ぶ娘の声がし、三度目に白い鯉がびくから跳ねて逃げ、赤い鯉と深みへ消えた。重い病に伏した源じいさんは、夢で白い鯉に漁をやめてと頼まれ、承知すると病が治ったという。
原典より
釜が渕にゃ、今でも、雪姫と紅葉姫が白え鯉と赤え鯉んなって、住んでんだどさ。—— 氏家町史 民俗編――伝説・昔話(氏家町(編)・氏家町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
氏家町史 民俗編――伝説・昔話(氏家町(編)・氏家町史)
『氏家町史 民俗編――伝説・昔話』は、氏家町の町史民俗編のうち、第五章「くらしと言語」の第一節「伝説・昔話」と第二節「ことわざ、俗言」の初めを収めたものである。昭和七年版『氏家郷土誌』の数編と町史編さん室などが集めた話から選んだ二十七話を土地の方言の語りに直して載せ、勝山城にまつわる歴史伝説や地蔵の信仰伝説が多い。各話の末に方言を主とする語注を付け、ことわざの節では日常に使われた俗言を頭の音(あ・い・う)ごとに並べる。