大蛇の女房と軒の菖蒲
どんな伝承か
昔、ある若者が、病で困っていた旅の娘を家に入れて看病した。元気になった娘は器量よしで、若者は好きになって夫婦になった。ところが妻は飯を炊いても自分ではまったく食べないのに、米はやけに早く減っていく。不審に思った若者は、ある日畑へ出るふりをして途中で引き返し、戸の隙間から中をのぞいた。すると大蛇がとぐろを巻き、握り飯をいくつも呑み込んでいた。若者が叫んで逃げると大蛇が追ってきたが、夢中で沼地の草むらに潜り込むと、大蛇はそこへは来ずに去った。見ればそこには菖蒲とヨモギが一面に生えており、それから五月の節句には軒に菖蒲とヨモギを挿すようになったという。
原典より
ほしたら、あえやぁしたぁ、でっけえ蛇がとぐろ巻えで、撮飯をえぐっづもえぐっづもぐん呑んでたんだど。—— 氏家町史 民俗編――伝説・昔話(氏家町(編)・氏家町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
氏家町史 民俗編――伝説・昔話(氏家町(編)・氏家町史)
『氏家町史 民俗編――伝説・昔話』は、氏家町の町史民俗編のうち、第五章「くらしと言語」の第一節「伝説・昔話」と第二節「ことわざ、俗言」の初めを収めたものである。昭和七年版『氏家郷土誌』の数編と町史編さん室などが集めた話から選んだ二十七話を土地の方言の語りに直して載せ、勝山城にまつわる歴史伝説や地蔵の信仰伝説が多い。各話の末に方言を主とする語注を付け、ことわざの節では日常に使われた俗言を頭の音(あ・い・う)ごとに並べる。