桑畑の川
どんな伝承か
田島にはキツネが多く住んでいたという。ある日、商いに出かけた男がいつもの時刻になっても帰らず、心配した息子が様子を見に出ると、家のすぐそばの桑畑の中を、着物の裾を腰までまくり上げて「深い、あぶねえ」と言いながら歩き回る父の姿があった。深い川を歩いているかのような格好だったが、そこはただの桑畑だった。息子が肩をつかんで揺さぶると父は我に返り、村人たちは「キツネに化かされたんだんべ」と話し合ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
真岡市史 第5巻(民俗編)――伝説・昔話(真岡市(編)・真岡市史)
『真岡市史 第5巻(民俗編)――伝説・昔話』は、栃木県真岡市の市史民俗編から、第十四章「口頭伝承」の第一節「伝説・昔話」を収めたものである。大だら法師の足跡、釜淵の燈籠、大前堰の人柱、へび娘など、五行川・鬼怒川・小貝川の淵や沼、社寺にまつわる伝説と、タヌキやキツネに化かされた話を、既刊の民話集・伝説集と新たな採話から集める。冒頭に口頭伝承の参考文献を掲げ、各話の末尾に典拠を記し、結びの「まとめ」で話を河川・社寺・沼・動物の別に整理する。