弘法大師に声を封じられた秦楽寺の蛙
どんな伝承か
七不思議の中には、動物の変わった姿や振る舞いに伝説を添えたものが多い。奈良県磯城郡の秦楽寺の近くでは、蛙がいても少しも鳴かないという。むかし弘法大師がこの寺を訪れて寺の僧と語り合っていたとき、蛙の声がうるさくて話が聞き取れなかったので、まじないを唱えてその声を封じてしまい、それから蛙が鳴かなくなったと伝わる。偉い人に声を封じられた鳴かない蛙の話は各地にあり、反対に、交尾の季節に群れ集まって騒ぐ蛙を合戦に見立てた蛙合戦の話も各地に伝わっている。
原典より
このように昔、すぐれた人に声を封じられた不鳴蛙()の話は各地にある。—— 日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語)
『日本人物語5――秘められた世界』は、日本人の暮らしの奥にある秘められた信仰や伝承を扱った叢書『日本人物語』の一冊である。境の神や通過儀礼を論じる序論に続き、入らず山や隠れ里、竜宮、平家谷、埋蔵金、生まれ代わり、あの世を見た話、魔法使い、生霊、秘密結社、狐憑きなどを、伝承と昭和三十年代までの新聞記事・見聞を織りまぜて述べる。序論「生活文化の秘密性――はじめに」の後、「奇蹟」「不気味な神々」などの区分の下に短い節を並べる。