岩木山の女人禁制を破った妻たち
どんな伝承か
誰彼なしに登ってはならない山は各地にあり、山明け・山開きの日を決めてその日から登り、戸たて・山閉じの日以後は登らないことにしていた。男だけが登り女を登らせない山も少なくなかったという。青森県の岩木山も終戦近くまでは女の登れない山であったが、戦地に夫を送っている妻たちが、夫の無事を祈る一念から夫の写真を肌身につけてこの山に登った。女ではあるが男の身がわりだからというので許されたと伝わる。そしてそれから、女も登るようになってきたのである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語)
『日本人物語5――秘められた世界』は、日本人の暮らしの奥にある秘められた信仰や伝承を扱った叢書『日本人物語』の一冊である。境の神や通過儀礼を論じる序論に続き、入らず山や隠れ里、竜宮、平家谷、埋蔵金、生まれ代わり、あの世を見た話、魔法使い、生霊、秘密結社、狐憑きなどを、伝承と昭和三十年代までの新聞記事・見聞を織りまぜて述べる。序論「生活文化の秘密性――はじめに」の後、「奇蹟」「不気味な神々」などの区分の下に短い節を並べる。