水無沢の雪崩は山神が洗う不浄
どんな伝承か
「谷の響」三之巻の「圧死」に見える話である。弘化四年、岩木山の水無沢へ氷雪を切り取りに出かけた者たちがいた。すると遠雷のように山中が鳴り響いたので、人々はいったん逃れた。ところがふたたび、大きな山が崩れるように地中まで響き渡り、積もっていた大雪がたちまち落ちて、岩のような雪の塊が数百も足下に飛び散った。長吉という者がこれに巻き込まれて圧死した。なぜこのように大雪が崩れるのかといえば、山神が不浄を洗い流したものだ、と土地では語られていた。同じ書には、岩木山で雪を取ろうとして命を落とした者の話がほかにも記されている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。