浅草岳の雪崩地帯と雨やみの術
どんな伝承か
登山家の西丸震哉は、インドのアシュラムでシバナンダ師から「雨やみの術」を授かったという。善い心を持ち人に奉仕する心を徹すれば、降るはずの雨を一定時間、特定の場所から取り去ることができるようになった。一九六三年の四、五月の連休、西丸の身代わりに越後の浅草岳へ入るパーティーがあり、雪崩地帯を二十八・二十九日に通過するため、この両日だけは雨に降られないようにと頼まれた。西丸が前日の夕方、西の空へ三日間雨が降らぬよう念じると、朝鮮半島付近にあった低気圧はその間ずっと停滞し、両日は快晴となった。パーティーは無事に雪崩地帯を越えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
山とお化けと自然界(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1990年(平成2年))
『山とお化けと自然界』は、西丸震哉が旧著三冊を編み直し、一九九〇年に文庫版あとがきを付けた随筆集である。山や湿原の探検、チョウや小動物とのつき合い、酒の話とともに、横尾谷の岩小屋で出会った幽霊、木曾御岳の人魂、亡兄との交信、テレパシー、呪い殺しの実験、雨やみの術など、著者自身の体験した怪異をつづる。生き物・酒・山・兄との交信の四部からなり、あとがきに『未知への足入れ』『山だ原始人だ幽霊だ』『山の動物誌』を元にしたと記す。