南羽山へ招いた隠れ里の女
どんな伝承か
陸中国和賀郡鬼柳村の扇田甚内が、ある朝早く起きて南羽山の上を見ると、若い女が立って手招きしていた。二三日続いたので招かれるままに登ると、二十歳ばかりの美しい女がいて、夫婦になる約束があるから家に来てほしいという。ついて行くと見たこともない仙郷に着き、甚内は女と契りを結んで暮らした。故郷が恋しくなって帰ることを許されたが、ここのことを人に告げるなと念を押された。家に戻ると三年が経ち、法事の最中であった。妻に責められて真実を明かした途端、甚内は腰が折れて廃人となり、家も元の貧乏に戻った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語)
『日本人物語5――秘められた世界』は、日本人の暮らしの奥にある秘められた信仰や伝承を扱った叢書『日本人物語』の一冊である。境の神や通過儀礼を論じる序論に続き、入らず山や隠れ里、竜宮、平家谷、埋蔵金、生まれ代わり、あの世を見た話、魔法使い、生霊、秘密結社、狐憑きなどを、伝承と昭和三十年代までの新聞記事・見聞を織りまぜて述べる。序論「生活文化の秘密性――はじめに」の後、「奇蹟」「不気味な神々」などの区分の下に短い節を並べる。