山神が定めた持ち運と湧き出る酒
どんな伝承か
隣同士の仲のよい男二人が山の御堂に泊まり、同じ夢を見た。集まった神々のうち、遅れて来た山神が、下の村で男と女の子を取り上げてきたと言い、女の子には塩一升と盃一個、男の子には米一升の持ち運があり、縁は隣同士だから一緒にしようと語っていた。目覚めて帰ると、夢のとおり両家に子が生まれていた。二人は夫婦になり家は富んだが、夫は妻の振舞いを嫌って追い出した。妻が道端の大根を抜くと跡から酒が湧き、山中の鍛冶の爺に腰掛石は皆金だと教えて二人は長者となり、その山はにわかに町となった。
原典より
或る所に、隣同志の仲の良い父共があって、木を伐りに山へ行き、其処の山の神の御堂に入つて泊って居ると二人は言ひ合はしたやうに同じい夢を見た。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。