四十二匹の虫の口やきとヤッカガシ
どんな伝承か
中山字原で聞き取られた節分の習俗。二月の節分は、としとり、せつぶんどし、まめなげどしなどと呼ばれた。豆がらを燃やしてほうろくで豆を炒るのは女の役で、炒った豆は一升桝に入れて神棚へ上げておく。まくのは旦那で、福は内、鬼は外と唱えながら、部屋から物置まで方々へ投げ、まき終えるとまた神棚に上げた。夕飯どきには豆を入れた福茶を飲み、家族はそれぞれ年の数だけ豆を食べる。豆をいろりに並べて年占いもした。豆を炒るのに使った豆木には、正月様に供えたイワシの頭を二つ刺し、いろりで焼く。旦那から順に唾をかけながら、四十二匹の虫の口やき、と唱えてこりこりに焼いた。夏に虫が増えないためのまじないだという。これをヤッカガシといい、あとで戸口に刺しておくと厄病がまわって来ないとされた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
高山村の民俗――昔話(群馬県民俗調査報告書 第21集・群馬県民俗調査報告書)
『高山村の民俗――昔話』は、群馬県民俗調査報告書の第二十一集から、年中行事の末尾と「口頭伝承」の部を収めたものである。口頭伝承は昔話・伝説・世間話の三つに分け、桃太郎・蛇婿入り・食わずの女房などの昔話、弘法の投筆や椀貸の渕・小太郎渕の伝説、怪力の馬之丞やアズキトギ・見越シ入道・かくしばあさんの世間話を載せる。各話の末尾には、中山字原・尻高字熊野・北之谷などの採録地と話者を添える。