初次郎が語った天狗界の暮らしと秘法
どんな伝承か
外川初次郎は、天狗の親様に連れられて知った天狗の世界の暮らしも語っている。旅の間になめた白い粉は、神前に供えた鏡餅から作ったものだという。親様から授かったのは、錦の袋に入った神々の系図の巻物を最初に、金比羅の掛軸や子供用のマント、鏡餅やスルメなどのお下がりだった。血気盛んな天狗は術で生きた魚を捕って食べ、江州の山奥にはモグサをこしらえて里へ売りに出る天狗もいるという。秘法として、棕櫚箒の毛を短く切って鼻の下に当てると鼻血が止まり、イカの甲を削り酢で練って耳に入れると歯痛が治り、柿のヘタを煎じて一週間飲ませれば寝小便が治ると教えた。天狗界の秘密を漏らすと叱られ、初次郎も二度叱られたという。
原典より
その二つ三つをあげますと、鼻血を止める法=シュロ箒の毛を一本ぬきとり、一寸位に切って、両鼻の穴の下へ並べて付けると即座に止ります。—— 現代の怪奇-日本列島のミステリー地帯(鈴江淳也・1970年(昭和45年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の怪奇-日本列島のミステリー地帯(鈴江淳也・1970年(昭和45年))
『現代の怪奇――日本列島のミステリー地帯』は、鈴江淳也が前著『日本の奇談』に続けてまとめた、現代の超常現象と奇談のレポートである。桑名の「天狗の初さん」、新幹線の亡霊、京都のタクシーに乗る幽霊客、人魂、原因の知れない奇病、念写と三田光一の透視などを、著者の取材・面談と、大正の新聞から昭和四十年代の週刊誌までの記事で集めて収める。五つの部に分け、あとがきは昭和四十五年三月の日付で、巻末に機関誌などを入手できる団体・研究家の一覧を付す。