新盆の墓参りで消えた七歳の娘
どんな伝承か
昭和二十八年七月十五日、新盆の暑い日の夕方、屋久島の中間の集落に住む漁師笹上繁蔵の妻初子は、七歳になる三女の佳子を連れて裏山の墓地へ花を供えに登った。見晴らしのよい小高い丘で、ほかに人の姿はなかった。娘におはじきを渡して墓の掃除をしていたが、二十分ほどして静かすぎるのに気づき振り返ると、佳子はどこにもいなかった。先に帰ったのかと急いで家に戻っても娘はおらず、青ざめた繁蔵は集落の人々を集め、鐘を打ち鳴らして明かりを手に夜の山を捜し回った。さほど深い山でもないのに行方はつかめず、捜索は打ち切られたという。
原典より
佳子ちゃんがあまりにもおとなしく、声一つ聞えないのに不審を抱いて、ひょいと振りかえると、どこへ行ったのか、佳子ちゃんの姿は消えていた。—— 現代の怪奇-日本列島のミステリー地帯(鈴江淳也・1970年(昭和45年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の怪奇-日本列島のミステリー地帯(鈴江淳也・1970年(昭和45年))
『現代の怪奇――日本列島のミステリー地帯』は、鈴江淳也が前著『日本の奇談』に続けてまとめた、現代の超常現象と奇談のレポートである。桑名の「天狗の初さん」、新幹線の亡霊、京都のタクシーに乗る幽霊客、人魂、原因の知れない奇病、念写と三田光一の透視などを、著者の取材・面談と、大正の新聞から昭和四十年代の週刊誌までの記事で集めて収める。五つの部に分け、あとがきは昭和四十五年三月の日付で、巻末に機関誌などを入手できる団体・研究家の一覧を付す。