栗駒山の魔の山で消えた茸とり
どんな伝承か
『医事新報』に載った「神かくし」は、医師である寄稿者が、当時六十四歳の叔父が秋に茸とりへ出たまま行方不明になった顛末を追悼をこめて綴ったものである。現場は国定公園栗駒山山麓の釜内峠、鬼首温泉に向かう林道との交差点付近。叔父は午前中に仲間三人で茸をとり、昼食のあと一人で山に入って消息を絶った。消防団員ら三百人が夜を徹して四日間捜索したが、道端に五〇メートルほどの間をおいて塩鮭と漬物の袋が落ち、その奥の熊笹の中に茸を入れる前掛が落ちていただけだった。あの山は魔の山で、入った人は神かくしに遭うと言い伝えられていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の科学――幻覚の心理を探る(中村希明・中村希明・精神医学)
『怪談の科学――幻覚の心理を探る』は、中村希明が精神医学の立場から著した怪談の解説書である。新聞記事の幽霊騒ぎや体験談、民話の化かされ話、「浅茅ヶ宿」やハムレット、『四谷怪談』などの古今東西の怪談を取り上げ、その多くを高速道路催眠現象、感覚遮断、飢えや寒冷、睡眠や薬物による幻覚として説明する。生理的幻覚から精神変調時の幻覚までを四章で分析し、終章「怪談の論理」で恐怖と幻覚の仕組みと日本の幽霊の特色を論じる。