天狗に迎えられて逝った外天坊
どんな伝承か
天狗の初さんと呼ばれた外川初次郎は、桑名の裏殿町に妻いしと暮らし、荷車を引いて生計を立てていた。大正十四年十月十三日には多度神社へ招かれ、生きたままで外天坊という天狗界の名を授かったという。世を去ったのは昭和三年十一月二十六日、五十七歳のときである。一年ほど前から両眼はほとんど見えず、床に就く日が多かった。最期の日、大勢の天狗が迎えに来ていると言い出したので、外天坊の見送りだといって知人や隣人が集まった。初さんは起き上がって刻み煙草をうまそうに一服し、では行ってくるぞと言い残して横になり、苦しむ様子もなく息を引き取った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の怪奇-日本列島のミステリー地帯(鈴江淳也・1970年(昭和45年))
『現代の怪奇――日本列島のミステリー地帯』は、鈴江淳也が前著『日本の奇談』に続けてまとめた、現代の超常現象と奇談のレポートである。桑名の「天狗の初さん」、新幹線の亡霊、京都のタクシーに乗る幽霊客、人魂、原因の知れない奇病、念写と三田光一の透視などを、著者の取材・面談と、大正の新聞から昭和四十年代の週刊誌までの記事で集めて収める。五つの部に分け、あとがきは昭和四十五年三月の日付で、巻末に機関誌などを入手できる団体・研究家の一覧を付す。