道了薩埵と天狗の大風
どんな伝承か
永禄三年八月、小田原城主の北条氏康が足柄城の普請を見回った帰りに、関本の最乗寺へ参詣すると触れた。当時、開山の了庵和尚は山中にいて、その弟子の道流は山を守るため生身のまま天狗になっていた。氏康がそれを聞いて、本当に天狗になったのかと尋ね、寺の僧がそうだと答えると、氏康の家来が人が天狗になどなるものかと言い放った。その途端に大風が吹き起こり、寺の屋根瓦を吹き飛ばした。氏康も驚いて本物の天狗だと認め、屋根を修繕させて難を逃れたという。道了薩埵の由来とされる話である。
原典より
すると、突然、大風が起こり寺の屋根の瓦を吹き落とした。—— 怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。