天狗の土産と警察の取り調べ
どんな伝承か
天狗に連れられて空を飛び、見知らぬ土地を訪れるたびに、外川初次郎はバナナのような土産を持ち帰っては近所の人々にも分けていた。あまりに度重なるので、泥棒ではないかとささやかれ、桑名警察署も放っておけずに取り調べた。品物の多くは神社の供え物のようなもので、刑事が後をつけても、どこで手に入れたのかはまったく分からなかった。刑事の中にはついに初次郎が天狗の弟子だと認め、心霊研究に打ち込む者まで現れた。初次郎は、お下がりは津島神社のものが一番多く、多度や熱田、秋葉、御嶽のお宮のものもいただいていると話していたという。
原典より
初さんは飛行して、見知らぬ土地を訪れるたびに、バナナのような土産品を持ちかえった。—— 現代の怪奇-日本列島のミステリー地帯(鈴江淳也・1970年(昭和45年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の怪奇-日本列島のミステリー地帯(鈴江淳也・1970年(昭和45年))
『現代の怪奇――日本列島のミステリー地帯』は、鈴江淳也が前著『日本の奇談』に続けてまとめた、現代の超常現象と奇談のレポートである。桑名の「天狗の初さん」、新幹線の亡霊、京都のタクシーに乗る幽霊客、人魂、原因の知れない奇病、念写と三田光一の透視などを、著者の取材・面談と、大正の新聞から昭和四十年代の週刊誌までの記事で集めて収める。五つの部に分け、あとがきは昭和四十五年三月の日付で、巻末に機関誌などを入手できる団体・研究家の一覧を付す。