女中が涸らした湯原の温泉
どんな伝承か
上沢渡の字湯原には湯宿の建つ温泉があり、客の入りは上々だったと伝わる。ところが繁盛するにつれ主人は女中の部屋にまで客を泊まらせ、女中たちは厩へ追いやられた。主人ばかりが喜ぶありさまに腹を立てた女中が、ある夜ひそかに死んだ馬の骨を湯船へ投げ入れると、湯はそれきり涸れてしまったという。跡地には薬師地蔵の石像だけが残っていたが、数十年前の大水で流され、はるか下流の五料の渡しで見つかった。迎えに出た土地の者が押しても引いても石像は動かず、そのまま置いて帰ったと語られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第4巻』は、日本の伝説を話型ごとに集成した叢書『日本伝説大系』の一冊である。茨城・栃木・群馬の三県に伝わる伝説を、男体・赤城の神争いや榛名湖の入水譚、平将門・源義家・親鸞・弘法大師などの事跡、河童・竜宮・長者・石・姥捨・九十九谷などの話型ごとに収める。各項は代表となる伝承地の話を掲げ、〔類話〕に各地の聞き書きを伝承者名や出典とともに並べ、〔文献〕に縁起・地誌などの古記録を抄出し、柳田・高木による話型名を添える。