笛を残して消えた稚児花松丸
どんな伝承か
都の大原の奥に庵を結ぶ幻夢という僧が、根本中堂に参った帰りに吹雪へ遭い、四王院へ立ち寄った。そこに居合わせた十四、五歳の児が雪の句を詠んだので、幻夢は興のままに下の句を継いだ。以来その児、日光山竹林房の花松丸が忘れられず、はるばる山を訪ねたが六、七百もの坊があって見つからない。御堂にこもると笛の音がして花松丸が現れ、一夜語り合い、笛と懐紙を残して去った。老僧は、花松丸はすでに人に殺されていると涙ながらに告げたという。
原典より
都大原の奥に草庵を結ぶ幻夢という僧が、根本中堂に参詣したおり、吹雪にあい四王院に立寄った。—— 日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第4巻』は、日本の伝説を話型ごとに集成した叢書『日本伝説大系』の一冊である。茨城・栃木・群馬の三県に伝わる伝説を、男体・赤城の神争いや榛名湖の入水譚、平将門・源義家・親鸞・弘法大師などの事跡、河童・竜宮・長者・石・姥捨・九十九谷などの話型ごとに収める。各項は代表となる伝承地の話を掲げ、〔類話〕に各地の聞き書きを伝承者名や出典とともに並べ、〔文献〕に縁起・地誌などの古記録を抄出し、柳田・高木による話型名を添える。