身代わりに刻まれたまおけの大師
どんな伝承か
弘法大師が教えを広めて笠間の地方に来たころ、その北の徳蔵あたりに一人の長者がいた。大師が立ち寄ったこの家には徳蔵姫という世にまれな美しい娘がおり、大師を一目見て心を奪われ、歌を贈って思いを訴えた。大師は諫める意味の返歌を返したが、娘の執心はかえって深まるばかりであった。大師は長く留まるのを非として、ある晩、家にあった材木で一夜のうちに自分の像を刻み、身代わりに衣を掛けて立ち去ったという。この像はのちにまおけの大師と呼ばれるようになった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第4巻』は、日本の伝説を話型ごとに集成した叢書『日本伝説大系』の一冊である。茨城・栃木・群馬の三県に伝わる伝説を、男体・赤城の神争いや榛名湖の入水譚、平将門・源義家・親鸞・弘法大師などの事跡、河童・竜宮・長者・石・姥捨・九十九谷などの話型ごとに収める。各項は代表となる伝承地の話を掲げ、〔類話〕に各地の聞き書きを伝承者名や出典とともに並べ、〔文献〕に縁起・地誌などの古記録を抄出し、柳田・高木による話型名を添える。