斧を落とした木挽きと亀が淵の姫
どんな伝承か
竜が淵から四キロほどさかのぼると、竜神峡随一の仙境といわれる亀が淵がある。滝となった水が岩を穿ち、渦を巻いて岩壁を削り、底の知れない深い淵をつくっている。この淵の底は上小川のわにが淵や天下野の源太淵、日立の泉が森の湧泉に通じているとも言い伝える。昔、一人の木挽きが淵の上の山で木を切っていて斧を落とし、探しに飛び込むと美しい音楽が聞こえてきた。進んで行くと美しい姫が現れ、ここは私どもの住む所、人に知らせればあなたの命はないと告げる。木挽きが夢中で逃げ出すと外は闇となり、雷鳴と豪雨で淵は荒れ狂い、それきり姿は見られなかった。今も淵に石や木を投げ入れると洪水になるという。
原典より
<柳田 「乙姫淵」「御前淵」「竜宮淵」「鎌ヶ淵」>竜が淵からおよそ四キロメートルほどさかのぼると、竜神峡中第一の仙境といわれる亀が淵がある。—— 日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第4巻』は、日本の伝説を話型ごとに集成した叢書『日本伝説大系』の一冊である。茨城・栃木・群馬の三県に伝わる伝説を、男体・赤城の神争いや榛名湖の入水譚、平将門・源義家・親鸞・弘法大師などの事跡、河童・竜宮・長者・石・姥捨・九十九谷などの話型ごとに収める。各項は代表となる伝承地の話を掲げ、〔類話〕に各地の聞き書きを伝承者名や出典とともに並べ、〔文献〕に縁起・地誌などの古記録を抄出し、柳田・高木による話型名を添える。