百日の祈りと廟に響く児の声
どんな伝承か
通幻は洛陽の生まれで、父の姓氏は伝わらないが、当時の人はその父を勇士であったと言い伝えた。母は清水観音に、願わくは聖なる子を生みたい、もし宿縁が無いならわが命を奪ってほしいと祈り、百日のあいだ清水寺に詣でて普門品を千巻誦した。ほどなく身ごもったが、元亨二年、産もうとして母は死んだ。父は悲しみやまず、古寺の広い場所を借りて屍を葬り、ねんごろに冥福を修した。その後、道行く人が廟の中で小児の泣くのを怪しんだ。一度二度ではないので人みなが知り、ある人が父に告げた。父は驚いて葬った所へ行き、壙を開いて見ると、子はすでに生まれていた。父は喜んで抱き帰らせ、祖母が育てたが、二歳の秋に父もまた世を去った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第6巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第6巻』所収の「文化叙事伝説」全44話(福井・富山・石川=北陸)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。