笠を負って旅立った長者の娘
どんな伝承か
八百津町の久田見に、長者屋敷と呼ばれる山深い里がある。昔ここに栄えた長者の家があったが、ある年の長雨で山が崩れて家は埋まり、美しい娘ひとりを残して一家は絶えた。娘は屋敷の跡を片づけると、亡き父母を祀る観音堂を建てる土地を求めて旅に出る。濃州屋敷と大書した笠をかぶり、観音を背負って東海道を東へ向かったが、名古屋を過ぎたある村で急な病に倒れた。手厚い看護もむなしく弱った娘は、村人を集め、死んだら観音と笠を本尊としてこの地に堂を建ててほしいと頼んで息を引き取る。村人はねんごろに弔って堂を建てた。それが今の名古屋の笠寺観音堂だと久田見では言い伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。