片目にされた高山の池の主
どんな伝承か
静岡市水見色の話。昔、水見色の殿様朝比奈縫右エ門が高山に登り、池のほとりで狩りをして愛馬を樹につないでいたところ、いつの間にか馬が水中に引き入れられ、屠り食われてしまった。見れば水中に牛体の怪物がいて、両眼は鏡のようで、鋭い二本の角を振り立てて立ち上がった。殿は愛馬の仇と大石を取っては投げ、戦ううちに烈風が起こり大雨が降って辺りは暗黒となり、怪物は黒雲に乗って空中に現れた。殿は屈せず、なおも石を投げ、最後の巨岩が怪物の目に命中すると、怪物は傷に耐えかね、高山の眼下にある下村の鯨ヶ池へ飛び去った。今も鯨ヶ池の魚は片目だといい、里人はこの池をかき回して雨を祈る雨乞いを現在も行っている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。