泡を返す乳母ヶ池の身投げ
どんな伝承か
清水の追分に乳母ヶ池がある。昔この地の金谷長者の家の乳母が、子を連れてこの池へ遊びに来たとき、あやまってその子を水の中へ落としてしまった。申し訳が立たないと思いつめた乳母は書き置きを残し、みずからも池に身を投げて果てた。徳川の世には、武士たちが八月の祭のころ通りがかりに「ウバヨイヨイ」と声をかけ、賽銭を撒くと、水の底からぶくぶくと泡が立ったという。池は今では小さくなったが、その水は咳に効くというので汲みに来る者が多い。かたわらの堂には、乳母が琴を弾く姿の木像が納められている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。