呼びかけに泡で応える池
どんな伝承か
沼津の城下から東海道を西へ十余町、縄手の松並木から半町ほど北へ入ったところに小さな池がある。昔、ある家の乳母が小児を背負ってこの池のほとりで遊んでいた。小児は水面に映る自分の影を友と思い、小躍りするうちに手がゆるんで水に落ち、死んでしまった。乳母も申し訳ないと言って後を追い飛び込んだ。駆けつけた主人が子を失った悔しさのあまり、乳母も言い甲斐がないと口にすると、水底で音がして泡が吹き上がった。以来、人が「乳母甲斐ない」と言うたびに、底から泡が上ってくるという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。