目をつぶっても入れるはずの慣れた港の入口が
どんな伝承か
沼津へ魚の取材に出かけた作家火野葦平が、三十年以上も船に乗ってきた老漁師や船頭に会って聞いた船幽霊の怪異の一つ。何十年も通い慣れ、目をつぶっていても入港できるはずの港の入口が、霧もかかっていないのに、どうしてもわからなくなったことがあったという。板子一枚下は地獄と言われる危険な仕事に携わる漁師でさえ説明のつかない、方向感覚を狂わされる不思議な体験として、火野に語られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私は幽霊を見た(東雅夫(編)・MF文庫ダ・ヴィンチ)
『私は幽霊を見た――現代怪談実話傑作選』は、東雅夫が編んだ怪談実話のアンソロジーで、メディアファクトリーのMF文庫ダ・ヴィンチの一冊である。平山蘆江・火野葦平・佐藤春夫・徳川夢声・遠藤周作・柴田錬三郎から石原慎太郎・新倉イワオ・稲川淳二まで、作家や文化人が自ら見聞きした幽霊や怪異を書いた文章を集める。目次には二十三篇と編者解説が並び、水木しげる・山田野理夫・桝井寿郎の座談「怪談詮議」や中岡俊哉「イタコの謎を追う」の抄録も含む。