沼津の郡役所の上を飛んだヒトダマ
どんな伝承か
田村有史の報告によれば、沼津の追手町は、かつて沼津城の追手門があったとされる一角で、そこが静岡県駿東郡役所となり、付近に警察署や裁判所などが集まっていた。郡役所の真前が田村家であった。ある晩、風呂が故障して母が銭湯に出かけ、少年の田村が留守番をしていると、隣家の果物問屋の娘ツギが遊びに来て店先で喋っていた。夜の八時か九時ごろ、ツギが急に蒼くなって「ヒトダマ!」と叫んだ。見ると郡役所の庁舎の上を、周辺のはっきりしない蛍光色よりやや白っぽい直径六寸ほどの綿飴の玉のようなものが放物線を描いて飛び、郡役所前の旅館の屋根に吸い込まれていった。
原典より
恐怖したツギちゃんは、あわてて帰宅してしまった。—— 現代の怪奇-日本列島のミステリー地帯(鈴江淳也・1970年(昭和45年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の怪奇-日本列島のミステリー地帯(鈴江淳也・1970年(昭和45年))
『現代の怪奇――日本列島のミステリー地帯』は、鈴江淳也が前著『日本の奇談』に続けてまとめた、現代の超常現象と奇談のレポートである。桑名の「天狗の初さん」、新幹線の亡霊、京都のタクシーに乗る幽霊客、人魂、原因の知れない奇病、念写と三田光一の透視などを、著者の取材・面談と、大正の新聞から昭和四十年代の週刊誌までの記事で集めて収める。五つの部に分け、あとがきは昭和四十五年三月の日付で、巻末に機関誌などを入手できる団体・研究家の一覧を付す。