三穂の稲から尽きぬ粥を得た婆
どんな伝承か
冬至の日に乞食坊主がやって来て、方々で泊めてくれと頼んだが、汚いといって誰も泊めなかった。ひとり暮らしの年寄りの婆さんが、泊めてやりたいが食べ物が何もないので泊めることができないと言うと、坊主は、自分は食う物には少しも不自由しないから泊めてくれと拝んだ。泊めてやると、坊主は稲木の穂を三穂だけ取ってきて、それをつき出し、粥に炊けと言う。どうなることかと思って炊いてみると、おいしい粥が余るほどできた。坊主はもう一日もう一日と七日滞在し、そのたびに三穂の穂を取ってきて、同じように炊けば飯はたくさんできた。あとには米がたくさんできて置いてあり、婆さんは一生食べ物に不自由しなかったという。
原典より
冬至の日に、乞食坊主が来て、到るところに「泊めてくれ」て頼んだけど、「乞食坊主はいやじゃ。—— 日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。