摺粉木の足跡を隠した霜月の雪
どんな伝承か
昔、山の谷の貧しい農家へ和尚が一人来て、今晩泊めてくれと言った。婆さんが、貧しくて食べ物もないので泊められないと断ると、和尚は「向こうの稲木にかかっている稲を盗んで来て、飯にして食べればよい」と言う。婆さんは、自分の足は普通の人と違って雪に跡がつくので盗んだことが分かってしまうと固く断ったが、和尚が分からないようにしてやるというので泊めることにした。稲を盗み、籾を草履でこすって飯を炊き、食べさせた。足跡を気にして寝ていると、その夜のうちに雪が降って、摺粉木のような足跡は分からなくなった。後で聞くと、その和尚はお大師さんであったという。それで十一月二十一日のお霜月のお大師さんの日に雪が降ると、この地方にお大師さんが来ておられるという。
原典より
昔、山の谷の貧しい農家のうちへね、和尚さんが一人、「今晩泊めてくれ」言うて来やはった。—— 日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。