大盥に生まれた女郎蜘蛛とお八重塚
どんな伝承か
綾部の町から東北にあたる猪倉という集落の話である。この地に高城という城があり、その城主だと名乗る立派な男が、毎夜のように猪倉のお八重という娘のもとへ通ってきた。お八重は集落一の美人で、相手の風采が立派なため疑うこともなく睦み合ったが、戸や障子を開け閉めせずに部屋へ現れるのが不審ではあった。やがて娘の腹がふくらみ始める。驚いた両親が事情を聞き出し、ある法師に尋ねたところ、高城の主である蜘蛛の仕業だと告げられた。大盥の上で子を産ませると、女郎蜘蛛が三杯も出てきたという。お八重はそのまま息絶え、その亡骸を葬った場所がお八重塚と呼ばれている。
原典より
これは何鹿郡綾部町の東北、猪倉と云う部落の話である。—— 日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。