子供の膝に糸を絡める余呉湖の蜘蛛
どんな伝承か
滋賀県の余呉湖には、湖の底に棲む蜘蛛の言い伝えがある。ほとりで遊ぶ子どもの膝に糸を巻きつけては水底へ戻っていくので、その糸をそっと外して杭に巻いておくと、たちまち強く引かれて杭が折れてしまうという。著者は、通る人の影が映ると引き込むという秋田県平鹿郡の影取沼の話とともにこれを挙げ、日本の風景のほとんどすべてに妖怪がひそんでいると述べている。
原典より
秋田県平鹿郡の影取沼は、通る人の影が沼に映るとその人を引き込むといい、滋賀県の余呉湖は、湖底の蜘蛛が遊んでいる子供の膝に糸を巻いては水底に入るので、それをそっとはずして杭に巻いておくと、糸が急に引かれて杭が折れるという。—— 日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路)
『日本の幽霊たち――怨念の系譜』は、阿部正路が書きおろした日本文学の幽霊論で、刊行は日貿出版社が手がけた。『竹取物語』『源氏物語』『平家物語』などの物語、『日本霊異記』から『遠野物語』『聴耳草紙』に至る説話、能と歌舞伎、さらに三遊亭円朝・泉鏡花・森鴎外・小泉八雲らの近代の作品に現れる幽霊をたどり、怨念の系譜として読み解く。第一章で幽霊の時・季節・姿・場・目的を論じ、終章で稲生屋敷の物怪や百鬼夜行など幽霊の周辺に及ぶ。