衣を奪われた天女おこぼの池
どんな伝承か
陰暦七月六日、鯰江犀之助友貞が近くの池へ釣りに行くと、美しい女が水を浴びており、傍らの松の枝に衣が掛かっていた。友貞はその衣を奪って帰り、女はやむなく妻となって、おこぼと呼ばれた。七年のうちに六人の子が生まれた頃、乳母のうたう子守唄から衣の在り処を知る。当時は結婚して七年目の七夕の夜に親類縁者を招いて酒宴を張る習わしがあり、友貞も宴を開いて幸せの絶頂にあった。ところが妻は不意に「かりそめになきしふすまの七とせに妹のかたみのたねをばのこす」と詠み、そのまま姿を消す。友貞が気づいたときには、天の川を背に衣をまとって中空を舞っていた。おこぼが水を浴びた池は愛東町妹にあるという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。