垣見の川辺に出るカワウソの偽人力車
どんな伝承か
垣見の村には竹やぶが多く、その間を川が流れ、澄んだ水が道すれすれに流れていた。この川には昔からカワウソが住み、道を通る人に水をかけたり川に引きずり込んだりするとよく言われていた。ある晩、本庄の人がそこを通ると、突然、人力車をひいた車夫が飛び出してきた。カワウソが化かしに来たに違いないと思い、タバコに火をつけて煙を吹きかけると、車夫は驚いて消え、川へドボーンと飛び込んだ。安心しているとまた同じ姿で出てくる。繰り返すうち手足が重くなり、力を振り絞って国領の鍛冶屋の家までたどり着いて助けてもらい、一か月ほど寝込んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。