入定した弥平を弔い続けた虚無僧
どんな伝承か
沼島に弥平という人がいて、死ぬときには生きたまま定に入りたいと考えていた。弥平は自分で穴を掘り、一週間ぶんの握り飯を持って中へ入り、上から土をかぶせてもらった。穴の中で鉦を打ち鳴らし、この音が絶えた日を自分の命日と思ってくれと言い残したという。弥平が入定したのち、そこへ虚無僧が現れ、弥平の鉦の音をまねて昼も夜も鈴を鳴らし、菩提を弔ったと伝えられる。人々はこれをながます谷の前の虚無僧と呼び、弥平の仏心に心を動かされた供養の話として語り継いでいる。
原典より
〈柳田―「入定塚」〉昔、沼島に弥平さんという人があって、死ぬ時には生きながら「定(じょう)」に入りたいと考えていました。—— 日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。