上崎の入定塚と紺屋の老女
どんな伝承か
むかし上崎村に新堀紺屋と呼ばれる財産家の紺屋があり、物知りで信心深いおばあちゃんがいた。せがれ夫婦も商売熱心、孫も三人と何不自由なく、この世に思い残すことはない、一日も早く御仏のもとへ行きたいと願うようになる。ある日、家族を集めて生き入定させてくれと頼み、家族が長生きを願っても決意は変わらず、親族の同意を得て入定の日が来た。大きな樽が埋められ、ふとんや十日分の食べ物も入れられた。おばあちゃんは籠に乗って入定塚に着き、塚の中に入ると、節を抜いた太い青竹を通して、しばらく満足そうに経を唱える声と鐘の音が聞こえていたという。塚には延宝三年の大日如来供養塔が今も立つ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
騎西町史 民俗編――伝説・昔話・妖怪(騎西町(編)・騎西町史)
『騎西町史 民俗編――伝説・昔話・妖怪』は、騎西町が編んだ町史民俗編のうち、方言一覧の末尾と第9章「伝説・昔話」を収めたものである。調査協力委員や地域の老人クラブを通じて集めた二十八話で、久伊豆明神(玉敷神社)の獅子、雷電社の雨乞い、和尚の説話、いぼとり地蔵、入定塚、念仏橋、狐やムジナに化かされた話などを、話者名や郷土誌の出典を添えて載せる。章のはじめに伝説と昔話の違いを述べ、神社・寺堂・塚と橋・行事のいわれ・妖怪談の五節に分ける。