阿霊ヶ池で美女に化けた貉
どんな伝承か
大正十四年の新聞記事に載ったという話。埼玉県北埼玉郡高柳村の鎮守大日如来境内にある阿霊ヶ池の付近には、百数十年を経た貉が棲んでおり通行人にいたずらをしていた。ある夜十一時ごろ、村の大工高田重三郎が用を足しての帰りに池の傍を通ると、若く美しい女が出て来て飛びかかってきた。重三郎が驚いて大声を上げると近隣の若者が集まり、女は消えてなくなったが、その場には牝牡二匹の貉がおり、そのまま捕えられた。牡の方は後頭部に打撲傷を負って弱っていたという。
原典より
* 墓を棄てる (296)* 狐の本音 (296)* 空中に消えた兵曹 (297)* 怪談黒子禍 (301)* 啞の妖女 (311)* 高尾越の怪異 (313)* 小廝の放火 (316)*…—— 日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。