父に埋められた幸太郎の地蔵
どんな伝承か
三朝川ぞいの大瀬では、毎年氾濫する川が一瞬で田を土砂に埋めてしまう。その年も土手が切れ、刈り入れ前の田は全滅した。村人は気を取り直して土手の工事にかかり、なかには人柱の話をする者もあったが、そんな恐ろしいことはできないと誰もが知っていた。かたわらでそれを聞いていた一人の百姓には、十六になる足腰の立たない幸太郎という長男がいた。村のためになるならと、彼はこの子を夜中に土手の底へこっそり掘った落とし穴へ連れ出し、生き埋めにした。後で知った村人は石地蔵を建てて霊を祀り、幸太郎地蔵と呼んだ。以来この土手は切れなくなったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第11巻』は、山陰の鳥取・島根両県の伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。矮姫による穀物の伝来、大山の山くらべ、伯耆の白兎、雲州皿屋敷、七尋女房、牛鬼、隠岐の後鳥羽上皇などを、伝承地を明記した口承の例話で示し、類話と近世以降の文献を添える。「文化叙事伝説」「自然説明伝説」の部に分けて話ごとに番号を付し、凡例のとおり例話・類話・文献・参考の順に並べ、多くの話に高木・柳田による伝説名を添える。