骨を抜いた礼に剣を運んだ狼
どんな伝承か
高岡郡日下村に伝わる。昔、村の一軒の農家に狼がやって来て、大きく口を開けたまま門の敷居に顎を乗せた。主人は骨が喉に刺さって困っているのだろうと察し、手を差し入れて大きな骨を抜き取った。狼は尾を振って喜ぶ様子で帰っていき、翌日の明け方、二振りの剣を口にくわえて来て、礼をするように置いて去った。主人は賤しい家に置くものではないとして、村の堂に納めた。数か月後、伊予の湯月宮から使いが来て、八幡宮の宝物である剣二振りが失われ、占うと土佐のこちらにあると出たので尋ねて来たという。事情を話すと使いはその奇特に感じ入り、村人の承諾を得て剣を持ち帰ったと伝える。
原典より
今は昔、高岡郡日下村の一農家に狼来たり、大きなる口を開き門の敷居に顎をもたせた。—— 日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第12巻』は、四国四県(香川・愛媛・徳島・高知)の伝説を話型ごとに集めた伝説集成の一巻である。神々の争いや大人の足跡、弘法大師の彫り残しや麦の種、英雄の誕生、長者、人柱、蛇聟、狼の報恩、化猫退治、首切れ馬、夜泣石、地蔵の霊験などを、町村誌や地方の伝説集、昭和五十三年度立命館大学説話文学研究会の採集調査稿から採る。百三十九話に通し番号を付け、各話に伝承地と出典、高木・柳田の分類名を添え、県別の〔類話〕と〔文献〕を続ける。