塔の尾で白蛇に破れた読誦
どんな伝承か
万歳寺の由来として語られる。天暦五年、脊振千坊の名僧性空の伴僧に隆信沙門という学徳すぐれた僧がいた。折しも暴風と豪雨が続き、洪水と山潮の被害に人々は怯え、さらに疫病が重なって嘆きは極まった。沙門は災害を除き万民を安んじようと、山姥や四十八怪や大蛇が出るという里人の制止を振り切り、一笠一杖で経巻を捧げて石谷山の塔の尾へ入った。月光の下で四十九日のあいだ法華経一万部を読誦するうち、八分どおり進んだ夜、白蛇が天女の姿を装って現れる。一度は退けたものの、満願まで七日という時、ふたたび現れた白蛇に心を乱され、読誦は九千部で廃れたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第13巻(山中耕作・宮地武彦(執筆・整理)/荒木博之(解説)・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第13巻――北九州(福岡・大分・佐賀・長崎)』は、福岡・大分を山中耕作、佐賀・長崎を宮地武彦が執筆・整理し、荒木博之が解説を担った伝説資料集の一巻である。姫島、うつぼ舟、百合若大臣、黒髪山の大蛇退治、平家谷、炭焼小五郎、河童、白米城など、北九州四県に伝わる伝説を題目ごとに収める。各題目は口承を重んじて選んだ例話を冒頭に据え、県別の類話を梗概にして伝承地と出典名を添え、近世以後の史料を文献として抜き出す編み方をとる。