戸田の淵に流れ着いた姫と水神碑
どんな伝承か
長禄三年のこと、宮之城の城主渋谷徳重の姫は、侍女七人をともなって樋脇川で舟遊びをしていたが、岸辺の藤へ手を伸ばした拍子に川へ落ちてしまった。数日後、戸田の淵に遺体が上がったので、この地に観音像を祀って冥福を祈ったという。姫の水死は河童が引き込んだためだとされ、観音の足元にはガラッパの像が据えられた。そばには水神と彫った石碑があり、この文字が消えたとき河童の罪も許されるといわれる。それゆえ夜ごと川内川や樋脇川から河童が上がってきて、懸命に文字を撫でて消そうとするが、石の文字はかえって深くなるばかりだと伝えられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。