にらみ合う野間岳と金峰山の傷跡
どんな伝承か
昔、まだ海や山が動き、山の木々が歌をうたっていたころ、ささいなことから野間岳と金峰山が喧嘩をした。地は揺れ海は荒れたが、両山は隔たっていて取っ組み合いまではできない。金峰山が身にまとうススキを投げつけると、その一本が野間岳の右目に刺さって血が噴き出した。野間岳も豊富にある石を投げ、金峰山の右肩に命中して鎖骨を折った。両者は手当てのため休戦し、今なお向き合ってにらめっこをしている。野間岳中腹の目といわれる大岩の片方は他の石より小さく、麓の人々の目まで二つ等しくないといい、金峰山の右肩も左肩より一段下がっているという。
原典より
まだ海や山が動き、山の木々が歌をうたっていたころの話である。—— 日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。