赤子が水に変わった弘法大師の観音
どんな伝承か
富士見市水子の大原にある農家に祀られた観音は、弘法大師の筆と伝えられていた。昔この家で若い僧を泊めたあと、家の娘が夫もいないのに男の子を産んだ。再び訪れた僧は子を引き取れと責め立てられたが、身に覚えはないと静かに打ち消し、左の手のひらに赤子をのせて息を吹きかけた。すると赤子は消え、手には水だけが残った。僧はその水で墨をすって観音の像を描き、家に残して去った。主人は弘法大師のお導きだと思い、その画像を大切に敬ったという。
原典より
富士見市水子の大原で、ある農家に祀られる観音は、弘法大師の作と伝えられていた。—— 武蔵の伝説(大島建彦/渡辺千佳子・日本の伝説・1976年(昭和51年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
武蔵の伝説(大島建彦/渡辺千佳子・日本の伝説・1976年(昭和51年))
『武蔵の伝説』は、大島建彦と渡辺千佳子が昭和五十一年に著した伝説集である。埼玉県・東京都と神奈川県の一部にあたる旧武蔵国の伝説を、地誌・紀行・社寺縁起・区市史や『埼玉県伝説集成』などの文献と土地の口碑から集め、項目ごとに出典を添える。『日本伝説名彙』の六部門に家・村と祭礼・行事を加えた八部に分け、巻頭の「はじめに」で伝説の分類の方法を論じている。