弘法大師に断って石になった里芋
どんな伝承か
昔、弘法大師が諸国を巡ってこの村を訪れたとき、ある農家で里芋を囲炉裏の火にかざして温めていた。大師がそれを分けてほしいと頼むと、家のおかみさんは、これは石芋だから食べられないと言って断った。すると翌年から、村じゅうどの家の里芋も本当の石芋のようになり、煮ても焼いても食べられなくなってしまったという。この話は筆者が子どもの頃、囲炉裏で八ッ頭や唐芋を温めて食べながら母から聞いたもので、芋を食べる季節になると思い出されたと記している。
原典より
昔、弘法大師が巡錫してこの村に来たとき、ある農家で里芋をいろりにかざしていた。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。