一の釜の膳椀貸しが絶えた訳
どんな伝承か
寄居町の内宿・関山あたりで、深沢川が荒川に注ぎ込む場所を一の釜と呼ぶ。釜とは淵のことである。鉢形城下のこの二つの集落では、人寄せで膳椀が足りないとき、この淵に向かって何人分貸してほしいと頼めば、必ず必要な数を貸してもらえたという。ある年のお日待ちに五十六人分を借りたところ、うっかり皿を四枚割ってしまい、黙って返した。それからは村人がいくら願っても一の釜は何も貸さなくなったと伝わる。淵の形は水の流れが変わって、今では昔と違っているという。
原典より
深沢川と荒川との合流するところが一の釜である。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。