弁慶が引きずった竜渕寺の泣く鐘
どんな伝承か
熊谷市上之の下宿にある鐘釣り橋は、沈んだ鐘を釣り上げたことから名がついたというが、その伝えはいくつかある。一つは弁慶の話で、竜渕寺の鐘を欲しがった武蔵坊弁慶が筑波山の方までこっそり引きずっていったところ、鐘が「竜渕寺こいし」と泣くので驚いて寺の近くまで戻し、逃げ帰った。村人が担いで帰る途中、下廓で川へ落としてしまい、皆で引き上げようとしても上がらず、竜渕寺の僧が水晶の数珠で釣り上げたので橋の名になったという。別の伝えでは、およそ四百五十年前に竜淵寺が大火に遭った際、鐘が寺から五百メートルほど離れた辰巳の方角の川に落ち、工夫を凝らして釣り上げたのが橋名の由来だとする。今ある鐘はその鐘ではない。
原典より
「鐘釣り橋」の名は沈鐘を釣りあげたためにおこったという。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。