ムジナドン(片貝)
どんな伝承か
片貝に、ムジナドンという変わった屋号の家があった。昔、その家の主人が南の白子町あたりへ毎日通っていると、帰り道の橋のたもとに絣の着物の男の子が立ち、「おやじ、おれぶってくろ」とせがむ日が続いた。ムジナの仕業と見た主人は紐を用意し、男の子を背負ってがんじがらめに縛りつけた。道中、男の子は一つ目小僧・三つ目小僧・のっぺらぼうを見せたが、主人は驚かず家まで運んだ。正体はムジナで、命乞いの礼に中気に効く薬草を教え、主人はそれを江戸へ売って裕福になったという。
原典より
ある所に、ちょっと変わった屋号のムジナドンと呼ばれた家がありました。—— 九十九里町誌 各論編 下巻(九十九里町誌・昭和中期~後期(記録内容から推定)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
九十九里町誌 各論編 下巻(九十九里町誌・昭和中期~後期(記録内容から推定))
本書は千葉県九十九里町周辺に伝わる民間伝承・怪談を体系的に記録した郷土資料である。きつね、大蛇、ムジナ、カッパなどの古典的な妖怪から、船幽霊や神かくしなどの超自然現象まで、多様な怪異譚を収録している。特筆すべきは、これらの話の多くが地域の屋号や信仰習慣の由来を説明する機能を持つ点である。また、妖怪との遭遇が引き金となり、恐怖症状から死に至る事例が複数記録されており、当時の人々の信仰深さと心理的影響の大きさを示している。