衣の裾に紅の印が残った阿弥陀
どんな伝承か
昔、堀内村、今の所沢市山口に、来迎寺の阿弥陀如来を深く信じる老夫婦がいた。ある晩一心に念じていると門を叩く音がし、日が暮れて困っている行脚僧だと一夜の宿を求められた。招き入れると供の僧二人も続いて上がってきたが、老婆が見ると、僧は来迎寺の阿弥陀の衣を着ており、顔も阿弥陀そのもの、供の僧も脇侍に似ていた。夫婦は心を尽くしてもてなし、送り出す際、老婆はそっと衣の裾に紅で印を付けた。翌朝来迎寺で拝むと、阿弥陀の衣の裾に紅が付いていた。和尚は仏に行脚させるのはもったいないと、堂前の三尊の足跡に足止めのまじないをし、以後阿弥陀が出歩くことはなくなったという。
原典より
その翌朝、来迎寺に行って、その阿弥陀様を拝すると、はたして、御衣の裾に紅がついていたという。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成——分類と解説 中』は、韮塚一三郎が編んだ埼玉県の伝説集の中巻で、上中下三巻のうち歴史伝説を収める。地名・屋敷・家系・聖地・城や堤や橋・神仏・神体と宝物・偉業・事件と紛争の九章に分け、県内各地の伝説を『新篇武蔵風土記稿』などの文献と土地の人からの聞き取りによって集めている。一話ごとに所在地と出典または資料提供者を記し、同じ類型の話をまとめた後に柳田国男らの説を引く〈解説〉を置く。